雨

　今日も朝から雨だった。木をしならせるような突風も吹き続けた。道を行くひとたちはたいてい、しばらくすると傘をさすのを諦め、風圧に立ち向かうようにして、雨を受けて駆け出した。会社帰り、わたしも買ったばかりのビニール傘を小脇に抱え走った。
　十代の初め、大江千里のファンだった。姉の影響だ。今も初期の作品を、よく聴く。好きな曲の一つにＲａｉｎ（アルバム「１２３４」所収）がある。槇原敬之もカバーアルバム「Ｌｉｓｔｅｎ　Ｔｏ　Ｔｈｅ　Ｍｕｓｉｃ」の４曲目で歌っている。

　　　「Ｒａｉｎ」
　言葉にできず凍えたままで
　人前ではやさしく生きていた
　しわよせで　こんなふうに雑に
　雨の夜にきみを抱きしめてた

　道路わきのビラと壊れた常夜燈
　街角ではそう　だれもが急いでた
　きみじゃない悪いのは自分の激しさを
　かくせないぼくのほうさ

　Ｌａｄｙ　きみは雨にけむる
　すいた駅を少し走った

　どしゃぶりでもかまわないと
　ずぶぬれでもかまわないと
　しぶきあげるきみが消えてく
　路地裏では朝が早いから
　今のうちにきみをつかまえ
　行かないで　行かないで
　そう言うよ

　肩が乾いたシャツ改札を出る頃
　きみの町じゃもう雨は小降りになる
　今日だけが明日に続いてる
　こんなふうに　きみとは終われない

　Ｌａｄｙ　きみは今もこうして
　小さめの傘もささずに

　どしゃぶりでもかまわないと
　ずぶぬれでもかまわないと
　口笛ふくぼくがついてく
　ずいぶんきみを知りすぎたのに
　初めて争った夜のように
　行かないで　行かないで
　そう言うよ
　（抜粋）

　どうしたって原曲の方が、圧倒的に切なく響くのは、好みのせいか。
　今日だけが明日へ続いてる。そんなふうに、当たり前のように終わらないと信じていたのに終わってしまった相手が、だれにでも一人はいるんだろう。いや、そうじゃないな。自分は永遠に終わりたくなかったのに、終わってしまったひと。始まりすらしなかったひとかも知れない。行かないで行かないで。そんなことを口にしてみてもすがってみても、立ち去ってしまったひとはもっと手の届かないところへ行ってしまうだけなのにね。
　今週は月曜から毎日、職場に顔を出した。やっぱり疲れてしまって、それで感傷的になってるんだろうか。こんなこと、書くなんて。セロクエル半錠で不眠はほとんど解消されたけど、中途覚醒と軽い頭痛がある。欝よりは軽躁寄り。夕べは、ひどい夢をみた。