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躁鬱病(BPⅡ)トウビョウブログ
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 就職が決まったとき、大先輩が吉本隆明の詩「ちひさな群への挨拶」を贈ってくれた。最初はよく理解できなかったこの詩が、次第に自分の中で意味をなすようになり、さらにその意味合いは変わっていった。精神的な支えだった時期もある。

……
ぼくの孤独はほとんど極限(リミット)に耐えられる
ぼくの肉体はほとんど過酷に耐えられる
ぼくがたふれたらひとつの直接性がたふれる
もたれあふことを嫌った反抗がたふれる
ぼくがたふれたら同胞はぼくの屍体を
湿つた忍従の穴へ埋めるにきまってゐる
ぼくがたふれたら収奪者は勢ひをもりかへす
……

 自分を鼓舞するように唱えた。若かった吉本の、闘争の決意。21歳で自殺した歌人の岸上大作は、絶筆に「吉本さん!『ぼくは拒絶された思想となって、その意味のために生きよう』とうたったあなたの鉄のような強さたくましさがうらやましい」と書いた。同じように、わたしの読み方も悲壮すぎて、そのくせ吉本の孤独の深さを、今よりもっと分かっていなかった。そんなところが自分や周りを追い詰めたのかも知れないと、振り返ってみたりする。今は同じ一節に、駆り立てられるより慰撫される。
 病気になってからは、谷川俊太郎が好きになった。「生きる」という詩を、書店の店先で初めて読んだときは、目を開かれるようだった。

生かす
六月の百合の花が私を生かす
死んだ魚が生かす
雨に濡れた仔犬が
その日の夕焼けが私を生かす
生かす
忘れられぬ記憶が生かす
死に神が私を生かす
生かす
ふとふりむいた一つの顔が私を生かす
愛は盲目の蛇
ねじれた臍の緒
赤錆びた鎖
仔犬の腕

 生きるは、生かされる。この当たり前のような転換に、何度も救われた。読むごとに、わたしを生かしてくれるものも増えていくような気がした。
 今夜は吉野弘が長女の誕生に寄せて書いた「奈々子に」を読む。子どもの視点から読む。赤ん坊の頬の描写で始まるこの詩は、我が子に語り掛けるような調子で続く。

唐突だが
奈々子
お父さんは お前に
多くを期待しないだろう。
ひとが
ほかからの期待に応えようとして
どんなに
自分を駄目にしてしまうか
お父さんは はっきり
知ってしまったから。

……

お父さんにも
お母さんにも
酸っぱい苦労がふえた。
苦労は
今は
お前にあげられない。

お前にあげたいものは
香りのよい健康と
かちとるにむづかしく
はぐくむにむづかしい
自分を愛する心だ。
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